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ピース・インタビュー Vol.12

貧困のしくみを変える、ムーブメントを起こしたい。

林 達雄/(特活)ほっとけない世界のまずしさ 代表理事

 3秒に1度「パチン」と指を鳴らし、3秒にひとり、貧困で命を失っている子どもがいることを知らせるホワイトバンドのクリッキング・フィルムを、覚えているでしょうか。

 中田英寿さん、ミスチルの桜井さん、藤原紀香さんなど13人がこのフィルムに出演して話題になり、一時は街に出ればホワイトバンドを身に付けていない人を見ないことはないくらいにまで広がったのは記憶に新しいことでしょう。

 2005年に始まった、この「ほっとけない世界のまずしさ」の「ホワイトバンドキャンペーン」は、日本で始めて大々的に行われた"アドボカシーキャンペーン"だと言われています。短期間で数百万個を販売するなどの成功を収める一方、厳しいバッシングの対象になったホワイトバンド。

 当時、日本で理解されにくかった"アドボカシー"とは、どんな活動のことなのでしょうか。そして、ホワイトバンドの流行によって、何がもたらされたのでしょうか。事務局を訪ね、代表理事である林さんにお話を伺ってきました。

文/山口 取材/2008年1月25日

■プロフィール
1954年神奈川県生まれ。愛媛大学医学部卒。国立横浜病院外科勤務を経て、1983年よりNGO職員としてアフリカやアジアで海外協力活動に従事。日本国際ボランティアセンター元代表。2002年ヨハネスブルグで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議に日本政府代表国の一員として参加。
現在、(特活)アフリカ日本協議会代表、(特活)ほっとけない世界のまずしさ代表理事を務める。アフリカの貧困やエイズ問題に取り組む。著書に『エイズとの闘い−世界を変えた人々の声』(岩波ブックレット2005年)、共著『グローバル化と人間の安全保障』(日本経済評論社 2001年)など。


パンフレット ――日本の「ホワイトバンドキャンペーン」は、どのようなきっかけで始めたのですか?
ホワイトバンドキャンペーンは、GCAPという世界最大の貧困撲滅を目指す団体が呼びかけていた「腕に白いものを巻いて貧困をなくすための意思を示そう」という大々的なキャンペーンから始まりました。

イギリスをはじめ世界で急速に広がるGCAPの動きに呼応して、日本でもこのキャンペーンを盛り上げよう!と日本のPR会社であるサニーサイドアップが主催するホワイトバンドプロジェクトとNGOの連合体キャンペーン実行委員会が連携して、「ほっとけない世界のまずしさキャンペーン」を始めたのが2005年の5月のことです。

その年の7月に、イギリスのグレンイーグルスでのG8サミットの開催が迫っており、それまでになんとか間に合わせようと急いでキャンペーンを立ち上げました。
これは、営利企業とNGOがコラボレーションして行う日本初のキャンペーンであるとともに、日本初の大々的な「アドボカシー(政策提言)キャンペーン」でした。

アドボカシーとは、直接的にお金を渡して支援するのではなく、人々の声を集めて「問題を引き起こしている仕組みそのものを変えていく」という政策提言のことです。

――なるほど。日本独自のキャンペーンではなく、世界的なアドボカシーキャンペーンの日本版だったわけですね。ところで、アドボカシーとは具体的にはどんな活動のことなんですか?
アドボカシー活動には2種類あります。一つ目は政府へ政策を変えるように直接呼びかけるロビー活動。二つ目はホワイトバンドのように多くの人に貧困問題に対する意識を持ってもらい、一人ひとりに一歩踏み出してもらうことです。多くの人に参加してもらうことは、政府への大きなプレッシャーとなりますから。

――では、2005年のホワイトバンドの流行は、政府への大きなプレッシャーとなったのでしょうか。
そうですね。当時首相だった小泉さんが、予定をしていなかった国連サミットに参加することになり、「私たちは、極端な貧困と闘っている人々、自助に努める人々に手を差しのべる、優しさのある国連が必要です」と発言したことや、イギリスのグレンイーグルスのサミットで、日本が100億円のアフリカへのODAの増額を約束したことなどは、ほっとけない世界のまずしさキャンペーンのもたらした良い結果だといえるでしょう。

林さん ――ホワイトバンドは結局何本売れたんですか?
約465万本です。当初は実行委員である私たちもここまで売れるとは想像していなかったので、正直驚きました。ただ、人気が加速するとともにいろいろな問題がでてきたのも事実です。

――メディアにホワイトバンドの売上げの使途について叩かれたことですか?
そうです。さまざまなメディアから「募金0円!」等という批判を受けました。このようなバッシングを受けることになってしまったのは、ホワイトバンドプロジェクトとキャンペーン実行委員会がホワイトバンドの売上げの使途の説明がタイムリーに行われなかったことと、直接支援ではなく"アドボカシーキャンペーン"であることが日本では理解されなかったことが主な原因だと思います。

当初、ホワイトバンドの説明書に書かれた「世界の貧困をなくすための活動に使われます」という言葉があいまいだったため、売上げの一部が直接貧しい人々に寄付されるものだと思われていたのです。

――では、ホワイトバンドの売上げは実際にはどのように使われているんですか?
例えば国内外のアドボカシーキャンペーンの支援や国内NGOのネットワークへの支援です。ACEというNGOの児童労働のパンフレットの制作費を援助したり、バングラデシュやマリなどでのアドボカシーキャンペーンへの支援を行ったり、今年7月に北海道洞爺湖で行われるG8サミットに向けて、国内約200団体のNGOが政策提言を取りまとめて政府へ提出する「2008年G8サミットNGOフォーラム」へも資金支援を行い、そのフォーラムの貧困開発ユニットの政策提言に深く関わっています。

また、情報をよりクリアにお伝えするために、私たちは国内のNGOとしては初の「社会責任報告書」を作成しています。465万本の売上げの使途を、改めて明確に公表していますのでぜひご覧いただければと思います。

ポスター ――なるほど、国内外でのさまざまなアドボカシー活動に使われているんですね。今後もホワイトバンドのような参加型のキャンペーンを行っていくご予定なんですか?
2000年に189カ国が約束したミレニアム開発目標(MDGs)をご存知でしょうか。このMDGsの中では、「2015年までに世界の貧困を半分にする」ことを約束しています。

2008年7月に行われるG8サミットの議長国が日本なので、MDGsの目標を守ることを日本政府に訴え、約束を実行に移してもらうことが今年最大の目標です。

そのために、具体的にはさまざまなセミナーやイベントの開催や、広報物を活用してWEBサイトや携帯サイト上で署名を集め政府へ提出する北海道洞爺湖サミットに向けた大々的なキャンペーンを展開しています。

――最後に、貧困削減に向けて一人ひとりができることがあれば教えていただけますか?
例えばホワイトバンドを身につけて問題意識を広めたり、公正な取引によって輸入されているフェアトレード商品を買ったり、貧困に関するNGOのイベントに参加してみるなど身近なところから始めてみてはいかがでしょうか。WEBサイト・携帯サイト上のサインアップ(署名)にもぜひご参加ください。

――ありがとうございました。G8サミットに向けてぜひ多くの方を巻き込んでください!

林 達雄さんより、記事を読んでいただいた方へのメッセージ

世界の貧困問題を解決するため、あなたにできる最初の一歩、貧困を減らすための署名に是非ご協力ください。
(署名はこちらから。)また、周りの友人にもお伝えください。



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