ホーム > 世界を知ろう! > ピース・インタビュー 企業編 >日本郵船株式会社 広報グループ コーポレート・シティズンシップ・オフィスチーム長 浜本 佳子
2004年12月26日、死者20万人以上もの犠牲を出した自然災害が起こった。スマトラ島沖地震と大津波だ。想像を絶するこの災害に、数多くのNGO、そして企業が支援に乗り出した。なかでも日本政府と経済界、複数のNGOが協力して立ち上がったジャパンプラットフォーム(JPF)は、迅速かつ効率的に支援に乗り出した。
このJPFの活動の根幹を影で支えていた企業があった。日本郵船である。日本郵船は、スマトラ島沖地震が起こると、すぐに救援物資の輸送ができると提案し、JPFと連携して支援を開始した。このような社会貢献活動を取り組むようになった背景や目的についてお話を伺った。
文/関根健次 取材/2007年8月15日

■浜本さんのプロフィール
日本郵船株式会社に入社後、船のオペレーション、営業の仕事などに携わる。社内の保育所の立ち上げ、運営などを担当した後、2004年より現職。
――御社は、ジャパンプラットフォーム(JPF)と連携し、被災地に救援物資を届けることなど、積極的に社会貢献活動に取り組んでおられますが、どのようなお考えから始めたのですか。
どのような企業であれ、何かしらのかたちで社会に貢献するようにできていると思います。弊社は輸送を通して人々の生活を支えるという、社会に貢献するという視点をもちやすいビジネスを行っているため、常に世の中の役に立つことを意識してきたと言えるかもしれません。
関東大震災の際には、上海航路を一時中止し、東西間の避難客、食糧の輸送を実施するとともに、横浜に停泊中だった客船にも避難民を収容し、負傷者の手当てなどを行った経験があります。1980年代、エチオピアで飢餓が深刻な問題となっていた際には、毛布を送る活動を行いました。
そのような活動は行ってきましたが、社会貢献活動に組織として本格的に力を注ぎ始めたのは2000年に入ってからです。2000年に作成した中期経営計画で、積極的に社会貢献活動を行っていくことと、NGOとのパートナーシップを強化していくことが決まりました。
このような背景から、まずはジョイセフ(家族計画国際協力財団)との取り組みが始まりました。ジョイセフの再生自転車やランドセルを開発途上国に寄贈する活動に協力することになり、無償輸送を開始しました。2006年までに1万7千566台の再生自転車をタンザニア、ベトナムなど世界約60カ国に届けました。
2005年の創業120周年を目前に控えた2004年10月には「コーポレート・シティズンシップ・オフィス」という社会貢献活動に専門的に取り組む部署を立ち上げ、組織として社会貢献活動に取り組む体制が整っていきました。
このような部署ができてから、なぜ企業が社会貢献活動をするのかということを何度も議論しました。たどり着いた答えは、企業も一市民ではないかということです。社会貢献とは一方的に何かをしてあげているのではなく、やったことは会社に戻ってくると気がつきました。会社が社会貢献活動を行うことで、社員はこの会社で働いていて、気持ちいいな、嬉しいなと感じ、会社に対して誇りを感じてくれます。このことが重要でないかと考えたのです。
――なるほど。開発途上国などで生きる人々の支援が、社員の会社への信頼や誇りを醸成することにもなっているのですね。コーポレート・シティズンシップ・オフィスができた後、JPFと「日本郵船グループJPF物資協働輸送プロジェクト」を立ち上げ、自然災害など緊急支援に対応できる体制を作り上げていかれたのですが、こちらはどのように始まったのでしょうか。
2004年10月にコーポレート・シティズンシップ・オフィスが立ち上がりましたが、その直後の12月26日にスマトラ島沖地震が起きました。これは、すぐに何か始めなければならないと思い、まずは弊社のホームページで緊急物資の無償輸送ができることを訴えかけました。すると、いくつもの団体から手が上がりました。しかし、どの団体を支援したらいいのか分らず、悩んでおりました。そんな時、日本経団連がJPFの支援をしていることを知り、JPFに連絡を取ったのです。
JPFに、緊急物資の無償輸送協力ができることを提案すると、すぐに一緒にやりましょうということになり、「物資協働輸送プロジェクト」が始まったのです。弊社では、80年代に毛布をエチオピアに送る活動を行いましたが、物資を港まで送ったのはいいのですが、毛布が山積みになったままでした。その時の苦い経験から、現地のニーズを知り、物資を配布する能力のあるNGOとのパートナーシップの重要性を痛感しておりました。
JPFのいいところは、これらの能力にたけたNGOがネットワーク化されていることです。緊急時に迅速に調査を行い、必要な物資を選択できる能力があり、また、物資が有効活用されるために配布できる能力があるNGOのネットワークなのです。
――JPFとの取り組みの、これまでの成果を教えて下さい。
合計で3回の支援を行いました。スマトラ島沖地震(2004年12月)、パキスタン地震(2005年12月)、ジャワ島地震(2006年5月)の際の無償輸送支援です。合計で20ftコンテナ68本分の物資を運びました。
――具体的にはどのような物資を運んだのですか。
水、石鹸、タオル、毛布、食糧、車椅子、医療機器、発電機などです。
――NGOと連携して救援物資を届けるこのような取り組みについて、どのようなことに苦労されましたか。
海上輸送は運ぶだけですので問題ありませんが、物資を届けた際、相手国が免税にしてくれないケースが多いようで、そのため物資を港まで届けたはいいが、受け取り手がなかなか引き取りにきてくれないようなケースもあります。物資を保管しておくだけで費用がかかりますので、弊社としてはこのような問題が起こらないように注意しています。例えばJPFの場合は、災害後の緊急支援を行っているので、支援物資としてJPFが免税措置を取るよう現地で手続きを行うか、それが叶わない場合はJPFが関税を負担することになるので、受け渡しの際のリスクが軽減されます。
―JPF以外の団体との取り組みについてもご紹介いただけますか。
ジョイセフの再生自転車・ランドセルを開発途上国に送る活動への輸送協力、シャンティ国際ボランティア会の「カンボジア・ラオスの子どもたちに絵本を届ける運動」については絵本の輸送協力、その他にも今年は大関・琴欧洲が支援する「海外に子ども用車椅子を送る会」に協力し、子ども用車いす112台を無償でブルガリアまで輸送しました。
――それぞれの団体に対して年間で運ぶコンテナ数など、枠を確保されているという理解でよろしいでしょうか?
JPFとは、自然災害発生時などの緊急時の取り組みとなりますので枠の確保はありません。輸送が必要になったら、とにかく持っていくというスタンスです。
ジョイセフについては、毎年20ftコンテナ30本程度を輸送しています。2000年から2006年末までに、合計202本の輸送実績でした。なお、通常コンテナについては持ち込んでいただくか、リースして返却してもらいますが、ジョイセフについては中古コンテナを無償提供しています。営業面では中国の特需によりコンテナ不足ですので、コンテナ確保は容易ではありませんが、ジョイセフについてはどうにか確保しています。
そのコンテナが支援国に届いた後どうなったのかをジョイセフからご報告頂くのですが、意外な活用をされています。コンテナが診療所、オフィスになっているケースもありますし、コンテナを売ったお金で現地の人が牛を買って、生計を立てたような事例もご紹介頂きました。
―ところで協働する団体はどのように選ばれているのでしょうか。基準は設けておりますか。
環境・国際貢献・次世代を担う人々の成長を応援する活動のいずれか行っている団体であること、継続的に運営できる体制が整っていること、支援をした後に報告が上がってくるかどうかということを確認します。また、行った社会貢献活動がメディアに取り上げられることは重要だと考えています。NGOとパートナーシップを組むことで、お互いよい広報活動につながることも期待しています。このあたりのことを理解してくれる団体と協働しています。
―このような社会貢献活動、本業での無償輸送支援についての社員の反応はいかがですか。
スマトラ島沖地震で支援を開始した時、ある社員から「何かできることはないかと思っていた。本業で支援に関わることができて嬉しい」といった感想をもらいました。自分が働く会社で支援に関われて嬉しいという意見が数多くありました。
―社会貢献活動の成果がしっかり社内でも現れていますね。
弊社の社員からすると、物を運ぶことは当たり前のことです。通常の輸送業務は、B to Bのビジネスであるため、輸送した物を最終的に受け取けとる人との接点はありません。それがNGOと関わることで、実際にその物を受け取り、その物を活用している人から「ありがとう」と言われる。物を運ぶことが役に立っていると実感できるのです。ですので、NGOとの取り組みは、社員それぞれが、自分自身の仕事を見直すよい機会にもなっています。
――ありがとうございました。
今後とも、NPO/NGOの方々との良いパートナーシップを通じて、社会の課題に積極的に取り組んでいきたいと思っています。
実は、社内では社員にもボランティア活動を勧めているのですが、そちらは、まずは「知る」ことから始めようというスタンスで取り組んでいます。「知る」ことから始めて、自分ができることを通して気軽に参加してみることが大切なのではと考えています。会社としてできること、個人としてできること、様々な形で皆が関わっていくことによって、より良い地球社会に少しでも近づいていくことができるのではないかと思っています。
個人的には、この仕事を通して、たくさんのたくましく、魅力的なNPO/NGOの方々に出会い、また現地のさまざまな状況を伺うなかで、「生きる」ということや「志」ということについて改めて考えさせられました。みなさんも是非、一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。新しい世界が待っているかもしれませんよ。
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