ホーム > 世界を知ろう! > ピース・インタビュー 企業編 >NGO・株式会社大地を守る会/ 広報室 大野 由紀恵
大地を守る会は、食べる人も、生産者も、そして地球もハッピーになれる農業である有機農業を広めることをミッションに1975年に設立されたNGOだ。NGOといっても1977年には株式会社も設立。現在はNGOと株式会社両方で事業展開している。始まりはNGOながら設立当初から寄付金に頼らず、自ら行う事業により収益を確保し成長を続けて来た他に類を見ない組織だ。事業型NGO、または社会的企業と言えるだろう。設立から33年目となる今年7月、NGOも株式会社も「大地を守る会」でブランド統一を行った。その狙いなどを伺った。
文/関根 健次 取材/2008年7月23日

■大野さんのプロフィール
1975年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒。高校3年次、夏休みの宿題で農薬の環境汚染を調べて有機農業に興味を持つ。大学卒業後、鉄鋼メーカー勤務を経て2000年より大地を守る会事務局。100万人のキャンドルナイト、フードマイレージ・キャンペーン事務局兼務。
――大地を守る会の事業内容について教えていただけますか。
「大地を守る会」は農薬の危険性を100万回叫ぶよりも、1本の無農薬の大根を作り、運び、食べることからはじめよう」と1975年にNGOとして活動を開始しました。最初の活動は、東京都江東区の青空市で無農薬野菜を売ることから始まりました。それ以来、農薬を可能な限り使わないで野菜を作る人と、おいしくて安心なものが食べたいという人を結ぶことで自然豊かな大地を広げていこうというコンセプトで、有機野菜を広めていこうとう有機農業運動を行っていきました。
2年で年間売上げが1,000万円になるまでに成長し、1977年にはビジネス部門として株式会社大地を設立しました。NGOでは個人名でしか銀行口座を作れないなどの弊害があったため、成長には会社設立が必要だと考えたのです。
宅配サービス「大地宅配」も開始し、全国各地の生産者と消費者のネットワークを広げながら、だれもが安心して食べられる農産物や水産物などを広く提供できるしくみ作りに励んでいます。2008年3月期の売上げは143億円で、生産者会員2,500人、消費者会員85,000人の規模となっています。
有機農業を広めると同時に、安全で持続可能な社会の発展を目指し、遺伝子組み換え食品の排除、フードマイレージ・キャンペーン、100万人のキャンドルナイトなど、さまざまな市民運動にも取り組んでいます。
――NGOから始まり、株式会社を設立。ひとつのミッションのもと2つの組織が共存しているんですね。とってもユニークです。NGOというと寄付金、助成金や会費頼みという組織が一般的ですが、大地を守る会さんは最初から自ら事業を行って成長していこうという考えだったのでしょうか。
はい。大地を守る会が立ち上がったのは1975年です。当時、NGOの存在が今ほど知られていませんでしたので、寄付や助成金で団体を何とかしていこうという発想がそもそも生まれませんでした。ですから最初から有機農業を広めるために、販売収益で組織を成り立たせようという考えでした。社会貢献とビジネスの両立は当時から実践しています。
――最近の言葉で言うと社会的企業ですね。または事業型NGOとも言えます。株式会社を始めてお客様からの反応はいかがでしたか。
NGOとしての大地を守る会の考えが株式会社に取り込まれてしまうんじゃないか、利益を追求するあまり、理念が変わってしまうんではないか、という意見がありました。私どもとしては、あくまでも株式会社は有機野菜を広める手段に過ぎません。法人名義で銀行口座を作るためなどの都合上、株式会社も設立しましたが、有機農業で社会を変えるということは会社の方でも変わりません。あくまでもNGOが上にあって株式会社が下にあるということなんです。
――2つ組織はあるけど、あくまでも目的は一緒ということですよね。1975年に創業されて今年で33年となりますが、現在までにどのような成果、どのような社会の変化を生み出されたとお考えでしょうか。また課題と感じられていることはありますか。
1975年当時、有機野菜はどこにも売られていませんでした。また、10人中10人に「成功しないよ」と言われてきました。それが33年経った今、全国のスーパーで売られるようになりましたし、有機野菜の宅配サービスのパイオニアとなったという自負はあります。
課題については、現在、国産農産物における有機野菜のシェアはわずか0.16%しかないんですね。これが33年の成果と考えると日本を変えるところまで来ているとは言えません。より社会に受け入れられるように、ブランド名の統一、インターネット販売の強化、カフェを作るなどの努力を続けています。
――ブランド名の変更については今月行ったところですよね。「大地を守る会」に統一されていますが、どのような狙いがあったのでしょうか。
これまでは市民活動の色をあまり出さない方が社会に受け入れられやすいのではと考えていましたので、宅配サービスのブランド名を「大地宅配」としていました。しかし時代は変化しました。例えば100万人のキャンドルナイトやフードマイレージ・キャンペーンのように社会を変えるような環境ムーブメントが作れるようになってきたんです。これからの時代は市民運動をやっていることが信頼となり、成長につながるということが実感できるようになったんです。そこで社名を「株式会社大地」から「株式会社大地を守る会」に、宅配サービスのブランド名を「大地宅配」から「大地を守る会」に変更しました。
――100万人のキャンドルナイトについては事務局をされていますよね。この活動も有機野菜を広めるためのアクションなのでしょうか。
はい。食べ物とは関係ないキャンペーンに思われるでしょうが、100万人のキャンドルナイトの目的は、ライフスタイルを変えることでもあります。キャンドルでスローな夜を過ごす時に、「なに食べる?」となる。その時に健康のためになり、環境にも負担が少ない有機野菜という選択肢もあることを知ってもらいたいんです。
――DAFDAF(だふだふ)基金という平和のための活動も始められましたね。
こちらの基金は顔の見える海外支援がしたいと思い、始まりました。まずは一昨年会員の皆さんに寄付を呼びかけて集まった約150万円をパレスチナで1.3kmの農道作りに役立てました。
どうして大地を守る会がパレスチナに農道を作ったかというと、もともとパレスチナからオリーブオイル輸入販売しているのですが、イスラエルがパレスチナ自治区内にチェックポイントを作ったため、車で農地に行けなくなったという事情があるからです。DAFDAF基金(The Development Assistance Fund of Daichi for Asian Families)ではオリーブの生産者が自分たちのオリーブ畑に入り、手入れや収穫ができるよう農道を、平和の象徴として農道を作りました。その農道を「Daichi Road(大地の道)」と名づけました。
パレスチナは遠いのですが、会員の皆さんは自分たちが支援した場所で作ったオリーブオイルを買うことになりますので、「つながり」が分かる喜びがあります。キャンペーンは色々考えられますが、すぐ終わってしまっては意味がない。日常につながる消費者参加型キャンペーンを作ることを心がけていますね。
――ここでまた農業について聞きたいのですが、日本の農家数はこの30年で3分の1程度に減っています。御社の33年の歴史では、取引農家数はやはり減っているのでしょうか。
ここ最近は2500件でほぼ横ばいです。既存の農家さんと密にやっていきたいという思いがあります。また、既存の農家さんにまだまだ生産能力の余力があるため新しい提案をしても吸収できています。そのため新規のお取引をする農家さんがあまり増えていないのが現状です。
――有機野菜を買いたいという需要がまだまだ少ないということですかね。
そうとも言えますね。消費者の皆さんが有機野菜をもっと買ってくれれば、農家も増えていくはずです。
――有機野菜のシェアを何%にしたいという目標はありますか。
100%を目指しましょうと会議で言ったんですが、あっけなく却下されちゃいました(笑)。ヨーロッパでは6〜7%を達成していているので、日本でも10%は不可能ではないと思います。まずは1%という数字が現実的かもしれませんが。
――ヨーロッパの有機野菜のシェアが高いのは国の補助金があるからでしょうか。大地を守る会さんとして、国に政策提言することはないのでしょうか。
大地を守る会としては、「政治を変えることで社会を変えよう!」ではなく、小さい取り組みを同時多発的にいっぱい起こすことで徐々に社会を変えていくことを目指しています。
キャンドルナイトはいい成功例です。過去5年の取り組みで、日本全国に活動が広がりました。有機野菜についても小さい取り組みからでも社会を変えることができるんではないかと思うんです。
私達は消費者を変えることを意識しています。消費者が動けばマスコミが動く。マスコミが動けば企業が動く。企業が動けば国が動く。以前、農林水産省に行って、有機農業を広めて欲しいと訴えたことがありましたが、消費者のニーズがないからという理由で断られました。それならニーズを作ればいいかなと。そうすれば最終的には国も動くわけですから。
――ありがとうございました。
安全でおいしいものが食べたい。そんな素朴な気持ちが、農薬に頼らないで野菜を育てる生産者を応援し、日本の豊かな自然や空気や水を守ることにつながります。確かに有機野菜は普通の野菜より高いかもしれませんが、数十円、数百円の違いです。この違いは、おいしい野菜で自分も幸せになり、社会もよくすることができる対価です。皆さんも、できるところから、農薬をできるだけ使わない野菜を選んでみませんか。
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