ハイチはカリブ海に浮かぶイスパニョーラ島の西側3分の1(東側はドミニカ共和国)に位置する。北・南米地域ではアメリカに次いで、1804年に独立した黒人初の共和国である。人口は約800万人、面積は四国の約1.5倍。現在、北・南米地域の最貧国である。
2004年1月1日、ハイチは独立200周年を迎えた。しかし、同年2月、アリスティド政権は反政府武装勢力の蜂起によって崩壊。現在、国連平和維持軍が治安維持活動に当たっている。だが、治安や経済は安定するどころか、悪化するばかりだ。
「貧困」と「暴力」の国。そんなイメージが定着してしまったハイチだが、その一方で、人々はヴードゥー教など、アフリカに根ざした独創的で、素晴らしい文化を築いてきた。
「ヴードゥー教」と聞くと、これも「ゾンビ」や「呪い」など、恐ろしいイメージを思い浮かべるかもしれない。長年、日本や欧米の怪奇小説や恐怖映画はヴードゥー教を多分に誇張し、私たちに大きな誤解を与えてきた。
ヴードゥー教とは、自然界に影響を及ぼすと信じられている数多い精霊との交流によって、個人や共同体が抱える諸問題を解決し、社会生活を理想的なものに近づけようとする民間信仰である。主に農民や都市の下層階級の人びとによって信仰されている。ハイチ独立前に、アフリカから奴隷として連れて来られた黒人たちとともに渡来した精霊信仰は、その後、奴隷が新地で体験した環境の変化やカトリックへの強制改宗などの影響を受けて、今日のヴードゥー教と呼ばれる形になった。
7月は、ヴードゥー教の聖地巡礼の季節である。首都ポルトープランスから北東へ約100キロの山間地、ソードゥーでは愛の精霊エジリの祭りが7月16日。そして、北部の村プレーヌデュノールでは、鉄と戦士の精霊オグゥの祭りが25日に行われる。祭りにはハイチ全土はもちろん、遠くはニューヨークやマイアミからも巡礼者が訪れる。
1954年生まれ。1988年からハイチを専門に取材する。著書に、『ハイチ 目覚めたカリブの黒人共和国』(凱風社)、『ダンシング・ヴードゥー ハイチを彩る精霊たち』(2003年8月 凱風社)がある。日本ビジュアルジャーナリスト協会(JVJA)会員。
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